記事のアーカイブ

2015年04月07日 16:09
 緑の腹巻にお金の入った封筒を捻じ込まれ、たまには甲斐性見せろと鋭利なピンヒールで蹴り出された。ゾロはぎろりとナミを睨んだが「それに関しては利子なしにしてあげる」と明後日な事を言われ、何を言っても無駄であろうことを確信して口を噤んだ。  おそらくその様子を終始目撃してしまったであろうサンジは困ったように笑いながら、それでも温かな心遣いを無駄にしたくはないと、ログが溜まるまでの一週間を二人揃って島で過ごすことにした。  船から離れるということは、サンジの負担が減るということ。昨夜、自分の誕生日の宴であるのに忙しく動き回った彼への、クルーからのプレゼントでもあった。  賑わう街へ足を向け
2015年04月07日 16:08
 ふと、視界を黒が掠める。  そうであるはずはないのに、愛した彼女を思い出して胸が痛くなる。黒猫はサンジをじっと見つめてから、顔を逸らして海へ向かって歩き出した。  陽射しの強さとデジャヴに頭がクラクラとする。何を考える間も無く、黒猫の後を追った。  喧騒が渦巻く港を抜け、やがて人気のない浜へと辿り着く。何もかもが彼女を無くした時を思い起こさせ、サンジの歩みを止めた。  黒猫は振り返って彼の元まで戻り、ひらりとその腕の中へ飛び乗った。見上げてくる大きな目は、懐かしい金色に光る。 「……なぁ、お前、」 サンジの言葉を遮るようににぁと鳴き、黒猫は視線を進んでいた方へ向けた。  少し先には、日向
2015年04月07日 16:05
 馴染んだ煙草の箱を胸ポケットに突っ込んで、我が家とも言えるレストランを出た時と同じ、背にひょいと担げる小さな荷物だけ。  あの時は、楽園に行けるのだと本気で信じていた。仲間と共に旅するその先で、目の前に現れるのだと。  小さな噂は尋ねれば耳に入った。海に深く関わる者なら大抵は知っている、奇跡の海の話。だがそれを信じるかどうかは人それぞれで、結局はそこに辿り着いた者が現れなければ夢物語なのだ。  なのに、噂は途切れることがない。  この海域で見るはずのない魚が上がった。  潮の変わり目がおかしい。  七色の波がたっていた。  小さな噂に振り回され、もう幾度項垂れたことか。  奇跡の海は回
2015年04月07日 16:03
サンジ誕生日2015   ベースはお世話になった方に押し付けるために作ったコピー本(海賊未来設定)で、 プラスついったにあげた猫の日小話と、急遽手をつけてなんとか間に合った完結編?です。 相変わらずサンジくん泣きっぱなしですが。    THE YELLOW MONKEYの「楽園」をベースに、 ついったでお世話になっている女神様の萌え設定をお借りしてできた他人のふんどしなお話ですが、よろしかったら…。 本人は割と気に入っています。  
2015年04月07日 15:15
少し難産でしたが、ふぉろわ様の素敵不倫ゾサに触発されて! サンジくんに家庭があったらどんなかと思って。 微妙に気に入っておりますw  キスの最中に携帯が鳴る。どんなことがあっても電話には出ると、一番初めに決めたことだ。例え体が繋がっていたとしても、だ。  糸を引いて名残惜しげに舌を出していたその口で、呼び出し音を止めて甘い声音で応じる。自分には決して向けられることのない色。羨ましいなどとは露ほども思わず、どちらかと言えば嫌悪に値する。  それでもこの男から発せられるものが、自分以外に向けられるのは面白くないのだ。 「帰らなきゃ」  通話を切ってから、淡淡と帰り支度を整える。その腕
2015年04月07日 15:13
警察官美容師でやりたかったネタの一つ。色々と要素薄いですが。  頭のおかしなサンジくんがいます。ご注意。  はぁはぁと荒い息遣いで額の汗を拭った。汚れた腕で擦りあげると、土のざらつきが肌を刺激する。けれどそんなことに意識を向けている余裕はなく、再びゾロは手に持った剣先ショベルに足をかけ、湿った土に突き込んだ。  深く深く、穴を掘らねばならない。  向かい合って同じようにショベルを振るう男を視界に収めながら、黙々と作業を続ける。 「こんなもんでいいか」  サンジが額に張り付いた金糸を払いながら顔を上げる。ゾロと同じで顔は土で汚れて真っ黒だ。もっとも、月明かりだけが光源なのでそれもよ
2015年04月07日 15:12
 どうしても言えずにいることがある。  それが今、オレの首をぎりぎりと締め上げている。 「どういうことだ」  オレの口端を親指で乱暴に拭って、指先に付いた紅を目の前に突き付けられた。  しまっ、た…! 「やっぱりてめぇは女の方がいいか。おれの手でぐちゃぐちゃに濡れて、あんなに悦んでるのにな。ありゃ演技だったか? おれを揶揄って楽しかったか?」  分かる。これは本気で怒っている。  恐怖を伴ってふるふると首を左右に振ると、どうやらそれがゾロに火をつけたらしい。 「どんな風にしてやったんだ? さぞかしお優しいんだろうな、てめぇは」  そう言いながら、残っていた口紅を丁寧に舌で刮げ取られ
2015年04月07日 15:08
「いい加減、うんざりしてんじゃねぇのか?」 「あぁ? な、にが……あ、ぅあ……」  突き上げながら投げ掛けられた質問に、思わず応えると舌を噛みそうになった。腹立ち紛れに自慢の長い足を腰に絡ませ、ぐいと締め付けて動きを止める。  少し余裕のない動作に、ハンゾロウはにやりと口角を上げた。 「なんだ、ゆっくりがいいか?」 「違ェだろ。うんざりしてるってんなら、テメェのそのしつこさに、だ。で? 何が何だって?」  分厚い筋肉のついた背を踵で強めに蹴り上げ、サンジーンは青い目を眇めながら先程の言葉の続きを促す。  ハンゾロウは隻眼を僅か細め、ゆるゆると腰の動きを再開した。そうすることで、サンジーン
2015年04月07日 15:05
 飯が美味くて跳ねっ返りで、素直じゃないくせに甘えたで。バカみたいに人のことばっかりで、目を離すとすぐにとんでもない無茶をしやがる。  そのくせおれの傷には泣きそうな顔をする。  ただの抜き合いの延長からセックスにまで行った時も、何も言わずに体を開いてきた。その時も泣きそうな顔で初めての苦痛に唇を噛み締めて、自分は全然イケなかったくせに、おれがイったことにホッとしたりして。  そんなの見たらてめぇ、好きにならないはずがない。  おれの勘違いでもいいさ。誰にでも向ける顔のうちの一つでも、これは今はおれのものだ。  おれの下で快感に震えながら、突っ込んだままイケるようになった頃、また、泣きそうな顔
2015年04月07日 15:04
 向け合った銃が黒い口を開けて互いを睨みつける。  知らなかったから惹かれたのか、知っていたら触れ合わなかったのか。  今はもうどうでもいい。あとはもう、引き金を引くだけだ。  ずれた銃声が響く。ゾロシアの肩が跳ね、サンジーノの頬に一線の朱が走った。銃を落とし肩を押さえ、それでも膝をつこうとしない男にサンジーノは冷たい目を向ける。  氷の様なアイスブルーが、一度だけ溶けた夜をゾロシアは思い出していた。 「テメェ馬鹿か」 「てめぇもな」  二人とも、照準は互いの眉間を寸分の狂いもなく差していたはずだった。引き金を引くタイミングも、互いの呼吸を読んでいた。  サンジーノが的をずらしたのが先だっ
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