24.お題@シアジノで『神様なんていない』

2015年04月07日 15:04
 向け合った銃が黒い口を開けて互いを睨みつける。
 知らなかったから惹かれたのか、知っていたら触れ合わなかったのか。
 今はもうどうでもいい。あとはもう、引き金を引くだけだ。
 ずれた銃声が響く。ゾロシアの肩が跳ね、サンジーノの頬に一線の朱が走った。銃を落とし肩を押さえ、それでも膝をつこうとしない男にサンジーノは冷たい目を向ける。
 氷の様なアイスブルーが、一度だけ溶けた夜をゾロシアは思い出していた。

「テメェ馬鹿か」
「てめぇもな」

 二人とも、照準は互いの眉間を寸分の狂いもなく差していたはずだった。引き金を引くタイミングも、互いの呼吸を読んでいた。
 サンジーノが的をずらしたのが先だったのか、ゾロシアがタイミングをずらしたのが先だったのか。

「銃を拾え、やり直しだ」

 何度でも遣り合おう。

「いつまでだ」
「いつまででも。これは互いの、少なくともオレは、オレの存在意義を掛けた戦いだ」

 気付いていないのか、とゾロシアは僅か眉間に皺を刻む。
 熱い夜に見せた、溶けた瞳から零れた雫と同じもの。あの時、舐め取ったら塩辛かった。

「神なんか居ねぇ。ここにはオレとお前だけだ」

 ぽろぽろと零す涙さえ構わないというように、サンジーノは口角を吊り上げて凶悪に嗤う。

「構えろ、ゾロシア。お前は何者だ? オレは、ドン・サンジーノだ」

 ゾロシアの瞳にも光が宿る。

「分かった。次は仕留めてやるよ」

 獣の顔でにやりと嗤う。
 向け合った銃が黒い口を開けて、互いを睨みつけた。
 
 
 
end