16.歪〈イビツ〉

2015年04月07日 14:40
診断メーカーにて
ZSへのヤンデレお題は【ロープ】、【こんな事でしか】、【「もっとよく見せてよ」】です。
 

 






 麻の粗雑なロープはちくちくと肌を刺し、悶えて動くほどに食い込んでいく。体の後ろで縛められた手首はその締め付けに、次第に痺れと感覚の鈍さを強くしていた。
 遮られた視界の向こうで、浅く早く熱い吐息の繰り返しが耳の中を濡らし、鼓膜を揺する。
 舌舐めずりが聞こえた。
 腹の上にゆっくりとかかってくる体重。少し苦しいがすぐに慣れる。耐えられない程ではないからだ。
 辛いのはほんの僅か、背中の下になった拘束されたままの両手。軽く捻ってみるが、やはり外れる気配はない。そんな微かな動揺を嗅ぎ取ったのか、くすりと空気が震える。
 ひたりと体温の低い掌が胸を撫で、次は何があるのかと身を硬くする間もなく、肩口に噛み付いてきた。じくりと意識が集中する。そのまま強く吸い付き、きっとそこには不格好な執着の証が残っているに違いない。
 ねとりと熱が充てられ、ツツツと皮膚を這い回る。肩から、胸へ、腹を。自身の口許からも湿った吐息が零れ出しているのが分かる。
 こんなことでしか求め合えない、歪んだ欲望。はたはたと、胸に腹に雫が跳ね熱を失って散った。
 頭を擦り付けると眼を被っていた黒いネクタイがずれ、淡い光の中で小さく震える体が見える。
 ああ、コイツはいつだってそうだ。最後の一歩を踏み出せない。ここまでしておいて尚、躊躇する。
 いい加減覚悟を決めろ。
 手が使えないから、踵で背中を小突いてやる。

「情けねぇツラしてんじゃねぇ。もっとよく見せろよ、てめぇの本気」

 白い体がびくりと震え、金の髪が小さく跳ねた。

「ここまで付き合ってやったんだ。あとはてめぇのケツでしっかり銜えろ」
「そしたら、」
「いくらでも、」
「ヨくしてやる」

 そう言うと嬉しそうにしたが、笑顔がどこか歪んで見えた
 そのカオを、もっと見ていたいと思った。
 こんなことでしか伝え合えない、イビツなココロ。



end