19.【R-18】Ecstasy(約2600字)

2015年04月19日 02:46
ふぉろわ様の素敵なハンジンちくぴあすイラストに滾りまして。
空前のちくぴあすブーム。
 
 
 
 
 
 のらりくらりと夜を躱され、やっと誘いに乗った男の指定するホテルへ足を運ぶ。
 ベッドに転がる姿に珍しく行儀がなっていると気分が高揚したのも束の間、上半身を剥き出しにした白い肌の上に線を引くゴールドが目に付いた。胸の上に主張する小さなふたつの果実は、その慎ましやかな姿を赤く膨らませて金環を銜え込み、華奢な細工のチェーンで繋がれている。
 ニヤニヤとベッドの上で嗤うサンジーンに、ハンゾロウは緩やかに上がっていた口角をヒクつかせ、額に青筋を立てた。
 
「おい、こりゃあどういうことだ」
 
 怒気を隠そうともしないで、低く唸るように声を出す。問われたサンジーンは思っていた通りの反応に、満足げに青を眇めた。
 前回、ハンゾロウはこの男に請われて左の胸、その小さな乳首にピアスを施した。用意されていた針を蝋燭の炎で炙り、触れるとすぐに芯を持つ乳首も、それを摘む自らの指先も茶色の消毒液に塗れさせ、針を通したのだ。
 苦痛に歪む端正な顔と、およそ聴くことのない悲鳴を、心地よいと感じながら針を進めた。
 金色の輪を通す頃にはすっかり勃ち上がり雫を垂らしていた陰茎に満足し、解しもしないで針を通したようにゆっくりと埋め込めば、初めこそ抵抗はあったものの中はぐずぐずに融けていて、そのまま奥まで突いてやれば触れずに達して白濁を撒き散らした。
 貫通式を済ませたばかりの乳首を軽く弄ってやれば、ぎゅうぎゅうと締め付けてくるものだから楽しくて仕方なく、時間を忘れて小生意気な男を啼かせ続けて、何度も気を遣らせた。
 何の意図があって胸にピアスを、しかもそれをハンゾロウにやらせたのかは結局口を割らなかったが、好ましいと感じているその体に消えない痕を刻み込めたのは至極気分が良かった。
 それから一ヶ月だ。
 抱き心地の良さに肌を合わせるようになってからは、サンジーンから呼び出しをかけることがあるくらいには、このセックスが好きなんだろうと思っていた。互いの都合で呼び出し、週に何度も体をぶつけたこともある。それは稀だとしても、長くても二週間以上間が空くことはなかったのに。
 一ヶ月ぶりの御馳走にありつけるかと思えば、男の様相は微妙に変わっていたのである。
 ハンゾロウがつけたピアスは左の乳首一箇所だけ。それが一ヶ月で右側にも施され、二つの金環を同じ色の鎖が繋いでいた。
 
「てめぇ、誰かにやらせたのか」
「そうだと言ったら?」
「面白くはねぇなぁ、この淫乱」
 
 くすくす笑うサンジーンをぎろりと睨みつけ、腰に下げた刀を音を立ててテーブルに置く。
 別に恋人でもない、セックスの相性がいいだけの、殺し屋という生業の同業者だ。どこで誰と体を重ねようが、互いに干渉し合う間柄ではない。
 なのに、なんだ、この不快感は。この体に痕跡を残したのが自分だけではなかったことに、怒りさえ覚えた。
 サンジーンは金鎖を人差し指で持ち上げ、山なりになった頂点に舌を掛けた。くい、と持ち上がる輪、それに引き上げられて行く赤い実。
 ぴくりと上体を震わせ、口角がゆうるりと上がり、頬が薄紅を載せ、青い目が弓なりに弧を描く。
 
「なぁ、弄りたく、ねぇか?」
 
 毒を含む声音で、鎖を食んだまま。
 煽られているのだと分かっていても、手を出さずにはいられなかった。ベッドに乗り上げ、鎖を咥えたその口を塞ぐ。
 
「ん、んぃ…ぁ……!」
 
 舌に巻き込んで引いてやれば、両胸の先がピンと張り、苦しげな声が口の端から洩れた。唇を離せば鎖はハンゾロウの元に移動しており、がちりと噛み締めたそれを多少乱暴に引いて男の痴態を引き出す。
 サンジーンは高い声で啼きながら、不機嫌な獣の頭を抱き込んで胸に埋め、腰に両足を絡ませて軽く動きを封じた。上がり始めた息を隠そうともせず、体を震わせながら咎めるような色を載せて言う。
 
「バッカお前、千切る気かよ」
「それもいいな」
「……お前、意外にオレのこと、好きな?」
「あぁ!?」
「ちょっとかわいらしいとこ見せたお前に、いいこと教えてやろうか」
 
 腰に絡めた自慢の脚はそのままに、頭を開放してやればまるきりケダモノの鼻息で鎖を噛み締めたままの強面が見上げてくる。その欲が全て自分に向いているのだと思うと、サンジーンは体の中心に熱が集まるのを自覚するよりなかった。
 むくりと芯を持ち始めたそこに、密着しているハンゾロウも気が付いただろう。すり、と腰を揺らし、主張を擦り付けた。
 
「お前はなんか勘違いしてるみてぇだが、これはオレが自分で開けたんだよ」
 
 ハンゾロウに開けられたのと反対側、何も飾りのないそこに自ら針を入れた。彼にされたことを思い出し、その手順を辿り、痛みを、快感に換えて。
 針を留置したまま後孔にバイブを突っ込み、前を扱きあげ、何度も一人で達した。ハンゾロウが齎した苦痛と快楽を再現し、ドロドロに融ける一人遊びを堪能した。
 
「淫乱じゃなく、変態だったか」
「でも、割と好きだろ?」
「……どうだか、な」
「ヒ……ッ!」
 
 鎖を引いて胸を虐めてやれば、喉の奥から掠れた悲鳴が洩れ出る。それが心地よいと思うなんて、ハンゾロウは自分も大概だと呆れてしまった。
 
「……ぃあ、ぁ、あぁ、も…イク、から……」
 
 乳首に不規則に与えられる刺激が、痛みと陶酔を運んでくる。ハンゾロウが顔を上げて限界まで引くと、声もなく腰を大きく揺らし、達した。それが分かると一際強く金鎖に歯を立て、華奢な繋ぎ目を噛み砕く。
 張った状態から開放された二つはベリーのように真っ赤に腫れ上がり、ピクピクと痙攣する全身に揺すられてとても美味そうだ。
 
「乳首だけでお漏らしたぁ、本格的だな」
「……そ、なの…も…好きなく、せに……」
 
 絶頂の余韻に浸りながら、切れ切れに紡ぐその声が、顔が。
 壮絶にいやらしくて、ハンゾロウも硬く着物の前を押し上げていた。
 
「まぁ、悪くねぇな」
 
 結局のところ、この男が触れさせたのは今のところ自分だけで、自分を使ってとんでもない自慰をするほどのめり込んでいるということなのだろう。その事実にニヤリと口端を上げる。
 悪い顔だ、と、サンジーンは胸を高鳴らせる。苦痛も、そこから溢れる快楽も、上手く与えてくれるのは今の所この男だけだ。
 丁寧に煽って、誘導して、絶頂の中でいつか、この手で命を奪う。根っからの殺し屋である自分にとってそれはきっと、何物にも代えがたいエクスタシーだろう。
 
 サンジーンは下肢を暴かれ乱暴に突き上げられながら、胸の金環を執拗に嬲るハンゾロウの舌を見つめる。揺さ振られ上り詰めた先で舌を絡め、そこに歯を立てて噛みちぎるのを想像し、何度も絶頂を迎えた。
 
 
 
end