14.もう少しだけこのままで

2015年04月16日 09:07
掴んだシャツの胸元に顔を埋め、じわりと濡らす。
小さな溜息が頭上に落ちてくる。
それから大きな掌が、ゆっくりと髪を梳く。
その温かさに、再び込み上げる。
もう少しだけ、このままで……。
 
 
 
 
 
血色の悪い顔を甲板に引っ張っていく。
不機嫌な様子を丸ごと抱き込んでおれの定位置にもろとも倒れ込めば、諦めたように全身の力を抜いた。
陽気が心地よく眠りを誘う。
ほらみたことか。あっという間にたてられた寝息は小さく、深い。
少しずつ挿してくる頬の赤みを掌で包む。もう少しこのままでいよう。
 
 
 
 
 
拒否の眼差しが深い口づけで次第に絆され、伏せられる。
そこからはこちらを見ようとしない。
弄る手にビクつき、強張る体を拓いていく最中に零れる、冷えた汗を舐めとる。
この腕から逃げることをしないお前に、いつも微かな期待を抱いてしまう。
小さな希望を胸に秘め、もう少しだけ、このままで。