6.【R-18】ひとりじょうず(約5000字)

2015年04月06日 15:45
0721の日間に合わなかったので、ただのひとりえちな話。終始温く致してるだけです。
えろ書くのにえろ補充しながら書いたから時間かかったな…。
ゾロ出てきませんが。
 
 




 ああ、ちょっと飲み過ぎてしまっただろうか。視界が、というより眼球がゆっくり上下左右を回っているのが分かる。縁に腰掛けていたベッドに、ぱったりと背中から倒れ込んだ。
 首元が苦しくて、少し緩めていたネクタイを完全に引き抜いてしまう。胸元のシャツのボタンを数個外してはだけると、少しだけ冷んやりとした夜の空気が上気した肌をそっと撫でた。
 ベッドに押し付けているはずの後頭部が、ふんわりと浮いたりぐぐぐと深く沈み込んだり忙しない。これは許容量を超えたな、と微かに残る理性が頭の奥でそんなことを言っている。
 このまま寝てしまうには、体勢がいささか窮屈だ。最後の力を振り絞るように爪先で靴の踵を落とす作業を繰り返し、足をベッドに持ち上げてごろりと横になった。だがどうにも腰回りの収まりが悪く、小さく呻いてからベルトに手を掛ける。覚束無い指先でカチャカチャと革と金具を弄り、仕舞いには纏わり付く生地まで鬱陶しくなって、体を左右にゴロゴロと緩慢に動かしながらベルトごとズボンを引き下ろした。膝下まで追いやってから両足を持ち上げてぶらぶらと振ると、重力に負けた黒く細長い物体はばさりと渇いた音をたてて真下に蟠る。
 ふう、と一仕事を終え息をつくと、手足を大の字に投げ出した。そのまま意識を手放しそうになるが、今夜は思ったより冷え込んでいるらしいが寒季には早い時節柄のため、まだ暖房のない安宿の一室は冴えた空気が凛と張り詰めだしている。
 喉を通る吐息は自分でも分かるくらい熱いのに、ふとした瞬間に体が勝手に寒さを感じて身震いを起こす。

「……ふ、ぅ……」

 散々動いていた時は何もなかったのに制止した体がほんの僅か身動いだだけで、上半身に残したシャツが胸の突起を小さく擦り、ぴりぴりと甘い刺激が生まれて思わず声が漏れた。アルコールで火照った肌が慣れた快感を過敏に拾う。
 ゆっくりと体を横向きにし、大きく開いたシャツの下に手を滑り込ませて疼きの元を探ると、指の腹を掠めた瞬間にまたくぐもった声が鼻から抜けた。恐る恐る人差し指の腹を当て、思い切ってぐりぐりと回すように一気に押し付けると、敏感になったそこから背筋を通って腰に甘いものが駆け抜ける。

「ん……ふあ……」

 快感を逃すように薄く開いた唇から吐息のように声を洩らすが、いつも同様口を噤んでしまう。どうせ初めだけなのだが、どうしても声を堪えてしまう。単なる羞恥心なのか、こんな場面ではあまり意味を成さないなけなしの矜持なのか。「ん……ん……」と唇を噛んで、自ら胸をゆるゆると虐めながら鼻から小さく息を鳴らした。
 元々アルコールで色付いていた肌が、桃の色をより濃く載せ始める。空いていたもう片方の手を口許に持って行き、自ら噛み締めていた唇に添わせて解いてやると、指を二本舌に絡め始めた。
 まるで忘れていたキスをするように、ぴちゃぴちゃと水音を立てて指で舌を、舌で指を弄る。指先で舌を挟んで吸い上げるのを真似るように口腔から引き出し限界で解放すると、知らず息が上がっていた。
 唾液を絡ませた指を胸元に遣り、刺激を与えられずにいたもう片方の突起へ、今度は躊躇うことなく擦り付ける。びくんと背を丸め「あぁ……」と先程よりかは幾分大きな声を出し、ぬるぬるとぬめる指で柔らかな粒を往復してやればそこはすぐに芯を持って、指からの刺激をダイレクトに受け取り始めた。
 背筋を通る快感が腰に少しずつ溜まり始めると、次第に中心も熱を持ち始めるのはいつものこと。浅くなり始める息を落ち着けるように、時折深呼吸のように深く息を吐くと、ゆらゆらと頼り無く灯っていたカンテラの炎が前触れなく消えた。油が切れたのだろう、予備は部屋の隅にあることは確認しているが、今はもう灯は必要ない。
 急に暗くなった部屋の中でギシ、と古いソファの軋む音がどこか遠くから、頭の中に響くように聞こえてきた。
 酒を呷る喉の上下する音、ふぅと深くつく息、身動ぎで起こる衣擦れの音。全てが遠くからぼんやりと届く。

『もう片方が留守なってんぞ』

 先に触れていた突起は既に硬く存在を主張していて、低い声に弾かれるようにそれを力の加減なく摘んでしまい、強い刺激に細く短い声を洩らしてしまった。

『声、抑えんな。いつも言ってるだろ』

 遠い声はどこか楽しそうな色を含んでいる。
 窓から差し込む月明かりも手伝い、気付くと部屋の仄暗さにも目が慣れて来た。だが部屋の隅にあるソファの辺りは死角になっていて、真っ暗なまま何も見えない。

『おら、どうした。いっつも俺がやってやるみたいに弄ってみろよ。おめぇ好きだろ? 強く、痛くされんの』

 まるで操り人形のように、声が届くとその通りに体が動いてしまう。
 両手の親指人差し指の腹をそれぞれ擦り合わせるように、挟み込んだ硬く赤く色づいた突起をじりじりと捩ると、刺激の強さに丸くなっていた背がピンと伸びた。

「あ……あ、ああぁぁ……」

 皮膚が、筋肉が開いて胸の周囲が引き攣り、それがまた新たな刺激となって全身を苛んだ。
 腰が少しずつ蠢きだす。覆っている布一枚がもどかしくて仕方ない。

「ゃ、もう……触り、てぇ……」
『あぁ、下着は取っちまえ。イキてぇか』

 下着に手をかけながらこくこくと緩く頷くと、喉の奥で笑うような声が響く。
 酔いで上手く下げられない下着を、それでも何とか取り払うと中心は既に硬さを持ち始めて、ゆっくりと上へ向かっていた。

『もうぐしょぐしょじゃねぇか。そんなにそこがヨかったかよ』

 そこ、と言われて再び胸へ手が伸びる。もう片方は窮屈なところから解放された自分自身へ。先程のようにじりじりと小さな粒を捩り、あつく熱を持った中心を上下に扱き始めた。
 指摘されたように、もう既に先走りの蜜で潤いを持っていた陰茎は抵抗なく手淫を受け入れる。

『てめぇ、ホントエロいな。乳首弄って、竿扱いて、自分でイっちまうんだろ?』
「……う、っせぇ……テメェの……所為だろ、が……」
『そうだな』

 熱を持たないその言葉を聞き流すようにし、快感を拾って高めることに集中する。
 深い酒の酔いも手伝って、触れた場所は驚く程過敏に反応する。迫り上がる射精感を堪えることなく、欲望の赴くままに自らの掌に吐精した。大きな開放感の後にびくびくと小刻みに残りの精を吐き出させ、それが齎す灼けるような熱を僅かの時間楽しむ。
 荒く大きくついた息を整えていると、今度は噛み殺したような笑いが零れてきた。

『もうイったのか。早く続きが欲しいか?』
「クソったれめ……寄越しやがれ」
『だったら、自分で解せ。見ててやるよ』

 ぐ、と一瞬息を詰めたものの一度大きく深呼吸をしてから、掌を濡らしていた自らの白濁を双丘の間に塗り込める。指にもまぶして中指を躊躇なく差し込むと、慣れた刺激ながらピリピリと電流のようなものが背骨を伝った。
 上がり始める息をそのままに、何度か根元まで出し入れを繰り返してから人差し指を追加する。いい具合に力の抜けている肢体は、拒むことなく二本の指を孔の奥へ誘った。数度抽送を繰り返すと内壁は蠢きだし、内側からの僅かな体液を白濁と混ぜてぐちぐちと淫猥な音を立て始める。
 空いた手は切な気に揺れる前を慰め、前も後ろもぐちゃぐちゃだ。

「あ……ク、ソ……」
『随分と焦れてんな。オラ、もう一本追加だ』

 隙間からを薬指を捩じ込むと、ハッハッと呼吸が短くなって息苦しさが増す。

『指、広げてみろ』
「いぁ……!」

 三本の指がじりじりと襞を伸ばし、その苦しさに思わず前を握る手に力が入った。
 どちらからもの強烈な刺激に、まだ芯を持ちきっていなかった前からとぷりと勢いのない液体が一度だけ溢れ出す。

『今日はいつもより感じ易いな。イイトコ当たったのか?』

 当たってはいない、ほんの少し掠っただけだ指先が、短く切り揃えた爪の先が。届かない、自分の指だけでは強く刺激することができない。

「んんっ」

 みっちりと入っていた指を三本まとめて一気に引き抜き、月明かりの助けを借りてサイドテーブルに数本並んでいた空のワインボトルを一本、どれでもいいからと引っ掴んだ。今吐き出した自身の精をボトルの口回りに塗りたくると、ガラス瓶はすぐに掌とぬめりに馴染んでつるつると滑り出す。
 冷たいのはすぐに分からなくなる。自分の中が驚く程に熱いのは三本の指が知っていた。

『ソイツに遊んでもらうのか』
「うる、っせぇ……!」

 ボトルの口を後孔に宛てがうと、思った程の冷たさはなかった。それよりも、早く刺激が欲しい。
 足りない足りないと切なく疼く腹の中を満たさなければ、もう気が狂いそうだった。

「は……あ、あぁぁ、あ……」

 自分で力を入れて押し込むと、ぐぷりと先を飲み込んだ。あとはもう、少し進めてやるだけで滑るように入り込んでいく。
 途中、指では届かなかったイイトコを引っ掻いて、体が大きく仰け反った。
 ここもいいけど、もっと、奥も。
 貪欲に求めてしまうのは、熱が足りない、摩擦が足りないから。
 圧倒的に質量が足りないから。
 でも、それだけじゃない。

「あ……ゾ、ロ……」

 ボトルの細い部分を全て飲み込んでしまうと、熱い吐息とともに思わず名が漏れた。
 横になったままの体勢では動きがもどかしく、俯せに体を返して額をシーツに押し付ける。折り畳んだ膝を着くだけで僅かに尻が上がり、銜え込んだままのボトルも僅かに瓶底が上へ向いた。ぴちゃ、と何かが鳴ったような気もするが、もう気にして入られない。
 少し力を入れてしまうとつるりと抜け落ちてしまいそうなそれを、両手を後ろに回して必死に押しとどめる。アルコールで力の入らなくなっている体は、気力も体力も限界が近付いていた。

「ぅふ、ん……くっ……」

 両手は掴んだボトルを前後に揺すり始める。体勢の苦しさに唇を引き結んで堪えるが、鼻から息とともに抜ける声は零れるに任せるしかない。
 手の動きが早くなる。
 足りない、足りない。
 入っているものは欲しいモノじゃない。

「あ、あ、あ、あ、あ」

 それでも敏感な体は快楽を求め、絶頂へ向かってひた走る。

「あ、もう……ろ……ゾロぉ……」

 名を呼んだ瞬間、背にずしりと温もった重みや汗の匂い、何よりここまで近付かないと聞こえないピアスの透き通った金属音が、耳許で鳴った。
 それと共に熱い息遣いで囁かれる、一言。

『……サンジ……』
「ぞ、ろ……っ!」

 低い声が、名を呼ぶ。これ以上ない刺激に、尻が腰が銜えたものを追いかけてぐぐっと突き出すように上を向き、両手は押し戻すようにボトルを細首の根元まで突き込んだ。

「あ、ああぁぁぁ……」

 シーツに擦り付けられて硬度を取り戻していた自身は、手を添えることなくぱたぱたと白っぽい体液を少量散らす。
 尻が上を向いたためボトルも同様に瓶底を天井へ向けた。絶頂を極めた肢体の奥深くに、ぴしゃりと液体が吐き出される。
 意識を手放しかけていたが、そろりと体を横倒しにしてゆっくりとボトルを引き抜いた。ごぷんと音を立て、緩んだ孔からさらさらと流れていく液体。僅かの間を置いて慣れた香りが漂ってくる。ボトルの中にワインが残っていたようだ。
 腸粘膜から吸収されたアルコールは、思った以上に酔いの回りが早い。体がベッドにずぶずぶと沈んでいくような錯覚を起こす。熱いけど、なんだか寒い。
 欲を吐き出して満たされたはずなのに、全然足りない。全く足りていない、存在感。
 部屋には初めから誰もいない。背中に乗った重みも体温も、名を呼ぶ声も。ぜんぶ頭の中で作り上げた虚構だ。
 だってアイツは、決して名前を口にしない。だからこんな想像の中くらいはいいじゃないか。
 今ここにいないアイツが悪い。
 なんでいないんだ。

「……アホマリモ……クソ迷子……ばかぞ、ろ……」

 夕方、宿の向かいの鍛冶屋に刀を取りに行ったきり戻ってきやしない。なんとなく面白くなくてヤケ酒を呷ったらこのざまだ。
 全部ぜんぶ、アイツの所為だ。涙が止まらないのも何もかも、全部。
 ああ、もう、限界だ。
 そこでストンと記憶が途切れる。
 朝、目が覚めると慣れた腕の中にいた。
 これは、本物。そう思ったら、また意識が眠りに落ちた。
 今度は幸せな夢が見られそうだ。



end