10.想いをカタチにして

2015年04月09日 13:44
市営団地の隣同士に住む幼馴染。
アパートの4階から見えるのは鮮やかな緑の山々。
眼下には山と同じ色の頭をして両手を広げて待つ…アホ面。
今日の挑戦は生卵キャッチ。
昨日の水風船でアイツはずぶ濡れになったのに、懲りない奴。
オレは白い殻に細い油性ペンで小さく一言を書く。うまく受け止めろよ。
 
 
 
 
 
塞がりかけた薄い皮膚にやんわりと歯を立てる。ぷつりと裂けるのが分かって、じわりと鉄の味が滲んでいく。何度も何度も同じ場所を食んで甘い痛みを残す。唇を離すと、ぺろりとそこを這う舌が煽情的だ。
「てめぇのせいで治らねぇ」
眇めた隻眼は、しかし責める風でもなく。
オレが残し続ける、傷。
 
 
 
 
 
言わなくても伝わってるし、言いにくいのは性格上知ってる。
態度や、触れる熱さや、優しい瞳で全部分かってる。
粗暴なお前がこんなにもあからさまに甘いのに、どうしてその一言だけが難しいのだろう。
なぁ、好きって言って。