10.【微R】マグネット

2015年04月07日 14:23
10/1磁石の日
診断メーカーお題:ゾロサンは『嘘でもつけたらいいのにね』もしくは『少しの距離すら怖いんだ』というセリフを使ってSSを書いてください。
Rは表現程度。
 

 






 正面から抱き合うのが好きらしく、いつも腕を一杯に伸ばして背中に回してくる。
 それでも、爪を立てないようにとほんの少しの理性が残るらしいが、追い込んで身も世もなく啼かせてやれば、男の勲章の出来上がりだ。いいんだよ、逃げを打つ傷じゃねぇんだから。
 膝の上に跨がってくるときは首に絡みつき、そのまま頭を抱き込まれて、細いが筋肉質な胸に通気を塞がれる。離すつもりはないようなので、悪戯に舌を這わせてやれば身を捩り、その刺激で締めつけてくるから、負けじと突き上げて応戦する。
 キスも好きで、どんなに切なかろうと、苦しかろうと、泣きながら舌を出して強請ってくる姿は艶美だ。
 とにかく向かい合ってくっつくのが好きで、後ろから撓る白い背に口づけて抱き込んでやりたいが、なかなかさせてもらえない。
 何かに脅えているような節もあり、問い質したことがある。意地っ張りな金色はなかなか口を割らなかったが、おれのしつこさを思い出して根負けしたように小さく漏らした。
「少しの距離すら怖いんだ」と。
 普段日中、そんな素振りは全く見せないくせに。肌を合わせると、途端にそんな想いに囚われるんだとか。
 アホだな、コイツ。
 いつ来るか分からない別れに脅えて震えている。残し残される窮愁を畏れている。
 こんな時、嘘のひとつでもついてやればお手軽な女なら安心するんだろうが。生憎おれの片割れに薄っぺらな言葉は通じない。
 そんなもので丸め込む気もねぇが。

「わかった、ひとつ約束しよう。てめェが死ぬときはおれの手を引け。おれが死ぬ時も、てめェを道連れにしてやる。離れてなんかやらねぇよ」

 強力な磁石みたいに、どこにいても引きつけ合って、どこまでも一緒にいるんだ。くっついて、離れない。
 おれたちはもうとっくに、距離なんてないだろう?
 だから後ろからヤらせろと言ったら、あほうと平手で殴られた。知っているんだ、後ろもものすごく感じて、お前だって好きなんだってこと。
 だけど今はもう少し、正面から胸と胸を合わせて、抱き合っていようか。



end