1.寒い朝

2015年04月07日 14:11
前提:とても寒い朝です。二人は高校生です。
 
 
 
 
 

 

「うおー、今朝はまた一段と冷えるな、おい」

 制服の上にコート、マフラー、手袋と完全防寒で、しかも両腕で自分を抱きしめて震えるサンジの横で、ゾロは薄手のコート一枚を羽織っただけだ。

「寒くねーの? お前」

 並んで歩きながらも、体を上下に揺するようにして進むサンジにゾロはちらりと一瞥してまた前を向いた。

「別に」
「ふーん。見てる方が寒いけどな、そのカッコ」

 こいつの気温感知センサーは表皮ではなく、きっと胃の中にでもあるんだろうとどうでもいいことを考えながら、正面から吹いてきた寒風にぎゅっと身を硬くした。

「が! ぐ、ぐぐ……」

 急に立ち止まり妙な声を出すサンジに、ゾロも立ち止まり振り返った。

「……おい、どうした?」
「……つ、攣った……」

 動けずに固まるサンジの元へ歩み寄る。

「どこだ」
「……く、首……」

 よっぽど痛いのだろう、涙目になっている。
 ゾロは持っていた鞄をぼとりと下に落とし、サンジのマフラーの下から両手を差し入れるとコートの襟元を開け、そのまま探るようにしてブレザーの中まで侵入した。さすがにネクタイとワイシャツのボタンまで開くのは手間だと思ったので、多少襟が邪魔ではあったがシャツの上から両手で首元を覆い、グイグイと強く揉み出した。

「いで! いででででで!」

 攣った痛みに加えてそこを揉みしだかれる刺激に暴れ出そうとするが、大きな二本の腕にがっしりと押さえ込まれて逃げることさえ叶わない。少しの間泣きそうな思いで身を任せていると、次第に痛みが引いてきた。
 体の力が抜けたことを感じ取ると、ゾロは手を離してコートから引き抜いた。

「あー、死ぬかと思った」

 緊張の解れた首筋を押さえながら、サンジは軽く首を回した。
 身なりを整え始めたサンジを横目にして、ゾロは自分の鞄を拾い上げて土埃を払った。

「鍛えてないからだ」
「んあ? 繊細なんだよ、オレは。筋肉マリモと違ってな」
「んだと? コラ」
「おう、やんのか?」

 鼻っ面を突き合わせて睨み合いながら、二人は並んで歩き出した。



end