7.君が笑うから

2015年04月09日 13:40
身動きが取れなくなる。
膝から下がムズムズして、胸の真ん中がギュっとなって、背筋がざわざわして、耳の奥で心臓が煩くなる。
だって、こんなの反則だ。
いつも仏頂面のお前が、オレに向かって笑うから。
 
 
 
 
 
「珍しいな、お前がそんな風に笑うなんて」
「そんな風って、どんなだよ」
「ん?なんか、嬉しそう」
おれがそんな風に笑ってるとしたらそれは、お前がそうやって笑ってるからだ。
 
 
 
 
 
荒れた下唇に歯を立てられて、ようやく塞がりかけた傷がじくじくと熱を持ち始める。
強く遠慮のない噛み方で、合った琥珀の目が緩く弧を描いた。
滲み始めるほんのりとした鉄の味に眉を顰めると、唇を噛み締めたまま喉の奥でクッと笑うのが分かった。
 
傷から派生した熱は全身を、心を、侵食していく。