2015年04月10日 09:43
中に出された後の腹痛はアレに似ている、というやつです。
いつもはちゃんとゴムをつけるのに、たまに思い出したように中に出す。溢れるまで、何度も、何度も。
終わっても、出してくれない。出させてくれない。中に留めたまま、痛んでいく腹を抱えるオレを眺めている。
愛おしいと、その瞳は言っているけれど。
ぐるぐると鳴る腹が苦しい。腰が重くなる。ずんずんと、鈍い痛みを下半身に広げていく。頭が痛い。眠い。辛い。悲しい。
オレが、壊れていく。
錠剤が一つ、神経質な指先から口の中へ入れられる。唇が塞がれて、人肌に温まった水が、とろりと流れ込んでくる。
錠剤はこくりと喉を通って、食物と同じ道を通り、同じ溜まり場に落ちる。そこで溶け出して、胃壁からじわじわと染み込んで、全身を巡っていく。
そうやって考えていると、さすられる腰の辺りの温かな手にも安堵し、いつか眠りに落ちるのだ。目が覚めればオレを苛んでいた苦痛は消え、ついでに胎の中に残されていた子種もきれいに掃除されている。
まるでオレに苦しみを与えるためだけに繰り返されているような行為の意味を、どうしても聞きだせずにいる。
それが一ヶ月に1回なのだと気付いた頃、ローは漸くオレに笑ってくれた。
「タネが胎ん中に残った時の痛みは、女の月経痛と似てるんだそうだ。どうだ、体が変わってきた気がしねぇか?」
「な、にが……?」
ローはゆっくりとオレの腹を撫でた。
「そろそろ、次の段階にいけるんじゃねぇか」
「次?」
「男でもできるんだよ、想像妊娠」
温かな手が心地良い。
「能力でお前の体を作り替えるような小細工はしねぇ。俺の想いの強さで、お前を孕ませてやるよ」
想いの強さなら、オレだって。
幻でも、お前との間に何かが芽吹くのなら。
「孕めよ、黒足屋」
オレは、お前のタネを取り込もう。
end