2015年04月09日 10:26
11/25いい事後の日、ローサンバージョン。
「よこせ」
不遜な態度で要求してくる男に、サンジは軽く嘆息した。
ぎし、とベッドに膝をつき、咥えていた煙草を寝転がったままのローの口へ移してやる。頭の後ろに組んでいた手を片方口許へ運んで、受け取った煙草を支えた。
すぅ、と吸い込むと眉間の皺が一層濃くなる。ゆっくりと煙を吐き出してから、また手の物に口を付けた。
サンジはその様子を視界の端に捉えながら、のろのろと身支度を整え始めた。黒いスーツに包まれていく、まだ軽く火照った体。
「おい」
不意に声をかけられる。
「返す」
差し出された、消えかけの短い一本。
サンジは苦笑してそれに手を伸ばした。その手首を掴まれ、ベッドの上に引き込まれる。
「火ィ危ねって」
消えかけのそれを奪い取って灰皿に始末し、心置きなくローの上に体重をかける。薄く開いた唇がサンジから仕掛けてくることを促している。
どこまでも尊大な態度を、笑って許せてしまう程度にはこの男に惚れているのだから、人の心の中なんてものは分からない。誘われるままに舌を絡め、残り僅かの逢瀬を楽しむことに集中する。
ローから感じる煙草の味は、なんだか不思議だ。
この男は普段まったく喫煙習慣がないのに、サンジとの事後にだけ、サンジの吸いさしを欲しがった。不味そうな顔をして最後まで吸い、そしてサンジとキスをする。何を考えてそうしているのかは分からないが、そうするこの男を可愛いと思った。
先程まで煙草を持っていた手が腰に回り、尻を撫で、スラックスの上から割れ目をなぞる。指先で何度も往復するその仕草に眉根を寄せ、キスから顔を上げた。
不埒な動きを非難するように青い眼を眇めるが、ローにはそんなことは関係なかった。疑問に思ったことを口にするだけ。
「シャワー、浴びなかったのか」
そう言って、ここと思う一点を強く押してやると、サンジの体がぴくりと跳ねた。
どうやらビンゴだったらしい。
「軽く掻き出しただけだろう。後で腹壊しても知らねぇぞ」
「その頃にはもうオレは海の上だ。お前には関係ねぇよ」
本当は、少しでも長く余韻を感じていたかっただけ。けど、そんなこと教えてやらない。
サンジは口許をゆるりと歪め、ローの腕の中から抜け出した。
「またな」
ちゅ、と唇を合わせるだけの軽いキス。にやんと笑い、黒いジャケットに袖を通しながら部屋を出て行った。
次に会えるのはいつかなんて分からない。
実際会えるのかどうかも分からない。
それでも、サンジはいつも「またな」と言って別れる。それがサンジのローに対する想いの表れであると、最近ようやくローにも分かってきた。
とりあえず、一方通行の想いではないらしいことに、柄にもなく口元が緩んだ。
end