4.嘘つき

2015年04月10日 09:44
診断メーカーお題
「ルフィがサンジを抱きしめると、涙目になって焦り始めました。この後めちゃくちゃ泣いた。」

 
 


 包丁を持つ手を掴まれる。危ない、と文句を言おうとしたら、その腕ごとまとめて抱きしめられた。
 咄嗟に放した包丁は床で硬い音を立てて滑って行く。大事な道具にこんな扱いをするなんて、プロのすることじゃない。自分が腹立たしくて、でも、それよりなにより。
 この状況がいけない。

「どうして……」

 こんなことをするのか。拒絶したのに。

「オレは、お前とそういうことになるつもりはないと言った」
「うん」
「離せ」
「やだ」
「……離してくれ」
「いやだ」
「頼むから……」

 声が震えてるのを気付かれたと思う。でも、このままでいてはいけない。
 抱きしめる腕を解こうと身動ぐが、締めつけは更に強くなる。

「離してくれよ……」
「ダメだ。お前は嘘つきだから」
「何を」
「お前は、お前に嘘つくのが上手いから。だから、俺が本当のこと教えてやる」

 黒い瞳がぐっと近付いてきたかと思うと、唇が塞がれた。無理な侵入をするようなものではないが、深く浅く、何度も内側の粘膜がこすれ合う。
 拙い、けれど熱く、頑なな心を溶かす触れ合い。

「お前、我慢すんな。俺が欲しかったら、ちゃんとそう言え」

 強い光に射抜かれる。見透かされている。敵わない。
 抱きしめられた腕の中で、めちゃくちゃ泣いた。
 
 
 
end