31.【R18】刻印

2015年04月10日 09:30
モブレを匂わすお話です。ご注意下さい。
 
 
 
 
 
 嫌がり、ずり上がって逃げようとする体を押さえ込み、両手をベッドに縫い付ける。暴かれた肌は傷だらけ痣だらけで、白い肌を痛々しい色で蹂躙していた。
 涙で滲む青が、自身に影を作る男を直視できずに大きく揺れている。

「……おれが、怖いか」

 顔を背けたまま、返事はない。晒された首筋に、見せつけるような赤黒い鬱血痕が散らされ、ゾロの熱を煽った。衝動のまま噛み付くと、体は大きく震えて喉が細く鳴った。ぎゅっと硬く閉じた瞼が痙攣しているのが傍目にも明らかで、押し出された雫が顔を汚す。
 それらが拒絶を示しているようで、やりきれない思いが加虐心に火を着けた。歯を立て、上書きするように赤黒い痕を強く吸い上げる。一つも余すことなく、どんな小さなものも見逃さず。
 そうして付けられただけではない、青や紫の皮下出血も同じように口付ける。擦り傷、小さな切り傷、身体中についたあらゆる痕跡を、まるで自分のものにしようとしているかのような行為に、サンジはただガタガタと体の震えが止まらなかった。傷に吸い付かれた時の生々しさ、ピリ、と痛むような疼くような刺激に熱を持ち始める体に恐怖し始めていた。

「や、だ……」

 ようやく漏れ出た声は完全なる拒絶。

「やめ、ぃ……あぁ!」

 解かれた腕が躊躇っているうちに、乱暴な指が体の中心を抉った。そこもまだじくじくと傷と痛みを残しているのを、知っていながらだ。
 
「やめ……こ、わぃ……」

 痛い、ではなく、怖い、と。

「おれが怖いか」

 短く切れ切れの息を吐く体は、先ほどの比ではない程にガチガチと硬く震えを起こしている。

「わか、な……ぜんぶ、こわぃ……」

 ぼろぼろと止め処なく溢れ続ける涙に、理性のブチ切れる音がした。
 指を入れたまま体を返してうつ伏せにし、上体を支える余裕を与える間も無く腰だけを高く掲げさせ、指を広げ、その隙間から無理矢理自身の雄を押し込んでいく。硬くなった体にミシミシと埋め込まれていく肉の塊に、サンジは高い悲鳴をあげた。
 苦痛と恐怖に戦慄く背中には、首筋と同じような鬱血痕、肩甲骨を中心とした皮膚の薄いところに大きく残る擦過傷。そして今ゾロが鷲掴みにしている細く締まった腰に残る、赤い、手の形の痕。力任せに抑え込まれていた証が、ありありとその様を見せつけてきた。
 もう、抑えが効かない。強く締め付ける力に逆らい、腰を動かした。

「ああああぁぁぁぁ!」

 サンジはシーツを硬く握りしめ、更に身体を強張らせて声を上げ続けた。潤いのないまま擦り上げ、サンジは元よりゾロも辛いはずなのに、一切力を緩めることはしない。やがて微かな滑りが生まれ、動きがスムーズになってくる。塞がりかけていた傷が、出血したのだと分かった。
 次第に水気を帯びてくる結合部に反して、サンジの悲鳴は小さくなっていき、やがて呻きに変わっていく。上から押し込まれるような抽送に合わせ、詰まるような息遣いが部屋に響いた。

「何人にヤられた」

 背後から容赦なくかけられる声に、サンジはシーツに顔を埋めたまま目を見開く。ゾロは血を流すそこを見つめながら、動きを止めずに

「何人にヤられた」

 と同じことを聞いてきた。

「何人に、どんな風に、ヤられた」

 そんなこと、覚えていられるわけがない。それに、人数ならゾロの方が知っているはずだ。その場にいた者を一人残らず切り刻んだのは、他でもない彼自身なのだから。

「殺してやるよ」

 あぁ、コイツは赦せないのだろう、とサンジは遠くなり始めた意識の中で思った。だってこんなに穢れた自分を、サンジ自身だって赦すことができない。
 このまま、ゾロに殺されてもいいかもしれない、と本気で思った。

「殺してやるよ、全部」

 ぎり、と腰に指が食い込む。ぐぐ、と体が倒れてきて、繋がりが深くなる。肩甲骨の傷ごと、骨に歯を立てられ、与えられる痛みの強さに意識が戻った。だが辛くて辛くて、額を擦るように首を左右に振るしかできない。

「お前を傷つけた奴ら全部、お前の中から殺してやる」

 サンジの背中に、ぽつぽつと温いものが垂れてくる。

「一人残らず殺して、お前の中から消してやる。だから」

  お前は苦しむな

 押し殺した声が背中に響いて、心臓がぎゅう、と痛くなった。
 今、この瞬間を、一緒に苦しんでくれているのだと。
 まだ心も体も痛くて怖いけど、きっと、ゾロが全部消してくれるんだと、そう思えた。
 
 
 
end