27.お題@現代設定ゾロサンで『いえない一言』
2015年04月07日 15:12
どうしても言えずにいることがある。
それが今、オレの首をぎりぎりと締め上げている。
「どういうことだ」
オレの口端を親指で乱暴に拭って、指先に付いた紅を目の前に突き付けられた。
しまっ、た…!
「やっぱりてめぇは女の方がいいか。おれの手でぐちゃぐちゃに濡れて、あんなに悦んでるのにな。ありゃ演技だったか? おれを揶揄って楽しかったか?」
分かる。これは本気で怒っている。
恐怖を伴ってふるふると首を左右に振ると、どうやらそれがゾロに火をつけたらしい。
「どんな風にしてやったんだ? さぞかしお優しいんだろうな、てめぇは」
そう言いながら、残っていた口紅を丁寧に舌で刮げ取られた。眉を顰め「不味い」と一言。
ぎり、と強く睨まれて、オレは戦慄しながらも微かな歓喜に震えていた。
オレが浮気したと思いながらも、オレを捨てようとせず、凶悪に縛り付けてくる、その執着。
そんなにオレがいいのか。
だからと言って、やはり本当のことは言えないのだ。
『商業オカマやってます』なんて。
end