2.和風バレンタイン(約1000字)

2015年04月07日 17:15
和食党のバレンタイン。ローサンバージョン。
 
 
 
 
 
 所謂、マウントポジションというやつだ。
 サンジがローの上に股がり、何やら迫っている。

「だーかーらー、試しに一個食ってみろって!」
「甘ったるいモンはいらんと言っている!」
「だからせっかくお前用に作ったんだから」
「チョコは食わん」
「チョコじゃないって」

 一度動きが止まり、サンジが摘んだ黒っぽいような茶色っぽいような物体を見つめる。

「バレンタインとかいうやつはチョコを食わせるんだろう?」
「まあな。でもチョコじゃないって」
「チョコじゃないなら、尚更食べる必要ないんじゃないのか?」
「まあ、でもチョコの代わり」
「何でチョコじゃないんだ」
「あんま好きじゃないって言ってたろ?」
「チョコじゃなくて、甘ったるいモン全般の話だ」
「そんな甘くしてないから。いいから食ってみろって」

 押し問答にも疲れてきたところで言葉を止めると、唇にぐいぐいとチョコじゃない物体を押し付けられる。
 仕方なくローが口を開くと、サンジは嬉しそうにそっと押し込んだ。咀嚼し、飲み込み、唇についたベタつきをぺろりと舐め取る。

「……悪くない」
「ふっふー、さすがオレ♪」
「で、何なんだこれは」

 満面の笑みでもうひとつをローの口へ運ぶサンジに聞くと、羊羹という菓子だそうだ。チョコのようにねっとりと口に残らず食べ易い。
 三つ目を押し込まれたところでサンジの手首を捕まえる。人差し指と親指を一緒に口に入れ、羊羹を噛み砕きながら器用に指を舐める。
 サンジの目を見つめながら、時折甘噛みするように歯を立てると体がピクリと跳ね上がる。指についた欠片まで丁寧に舐め取り、ちゅ、と音をたてて口から離してやるとサンジの顔は真っ赤になっていた。

「ヤラしい食い方すんなよ」
「この状況を作ったお前が言うな」

 そう言われ慌ててローの上から退けようとすると、掴まれたままの手首を引き寄せられ、倒れ込んだところで唇を塞がれた。後頭部を押さえられ逃げられない。口内でも舌を追いかけられ、強く吸われて搦め捕られ逃げ場がなくなるところで、先程指がそうされたように甘く噛み付かれる。
 どうしようもない痺れが背筋を駆け抜け、堪らず手を突っ張って体を起こすと口が解放された。浅い息をつきながら見下ろす瞳が焦点を捉えられなくなっている。

「甘ぇ」
「お前が食わせたんだろう」

 短い会話のあとにローも体を起こし、サンジを膝に乗せて向かい合わせに抱きしめながら再び唇を重ねる。
 チョコは嫌だと言いながら、チョコみたいにねっとりとしたキスをするな、と思いながらサンジは目を閉じ身を任せた。



end