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9.【微R】ヒメゴト(約3700字)
9.【微R】ヒメゴト(約3700字)
2015年04月07日 12:11
ゾロ誕生日2014
全然描写ないけど、一応致してます。
ゾロ誕用に出来上がっていたもののさくっと消してしまったやつですが、冒頭サルベージできたので復元してみました。
夜、体を繋げて熱を伝え合った後、抱き合って眠る。
こんなことをするようになってどれくらい経つのか、もうわからない。溜まった性の処理から始まったものではあるけれど、次第にそれだけではなくなっていったのはお互い様だ。言葉には出さずとも、気持ちの向かい合った先は同じだと感じている。そうでなければ、どうしてこんなに愛しいと思うのだろうか。こうして男の腕の中で眠るのを心地良いと思うことも、眠る自分の髪を弄ぶ男の仕草の説明もつかない。
朝、食事の準備のために先に起きる。そっと腕の中をすり抜けると、男は身動ぎして体勢を変える。やはり、ひと一人分の頭を支える腕枕は少々キツイらしい。そのまま仰向けになることもあれば、ごろりと回転して背中を見せてくることもある。
事後だいぶ時間が経っているはずなのに、コイツの背中はほんのりと湿っている。オレを抱きかかえているせいで、普段から高い体温が更に上がって、汗が引かないようだ。
傷ひとつないきれいな背中は出会った頃から何ひとつ変わらない。二年前に比べてとても逞しくはなったけれど。
筋肉の盛り上がりに、つ、と指を這わす。これくらいの刺激では起きないことはわかっている。隆隆と猛る筋肉は二年前の分まではオレが作ったものだ。オレの作る食事がゾロの体を作っていた。
二年経って見た背中は形を変えていたけれど、温かさや自分を抱きしめる強さは変わっていない。ほっとする。そして何故か時々泣きたくなる。きっと、失くしかけたからだと思う。
もう、あんな思いはしたくない。これはオレのものだと強く思う。
ひたりと掌を宛てる。意識を集中すると、背中にまで伝わって来る、鼓動。命の音。これをこの先、もう見失わないようにと、強く思う。
掌の下、生命の躍動の裏側にそっと唇を宛て、軽く吸い付いてみた。焼けた肌の中にひどく薄っすらと、つけたオレにしか分からないほどの、小さな花。この程度なら一日も保たずに消えてしまうだろう。ちろりと舌先でつついてから、狭い部屋を出た。
そんなことをなんとなく、こっそりと続けていた。背中を向けられた時、痕が見えなくなった時。本人にさえ分からないように、密やかに。何かをそうと決めてやっていたわけではないが、本当になんとなく、なのだ。
そしてある日、気付いてしまう。生命の裏側に戯れに落とした口づけが、消えないシミとなってしまったのを。
この男が命をかけて守ってきた背中を、軽率に穢してしまった。それこそ、よく見ないと分からない程度ではあるものの、でも、もう、消えない。
オレの視界の中で小さな小さなこのシミは、じわじわと広がっていく。やがて真っ黒になってゾロを丸呑みにして、全てを奪ってしまう。
オレが
ゾロを
殺す
針の先ほどの、きっとこれは、独占欲だったかも知れない。そんなちっぽけなものがコイツを絡め取る枷となり、死へと誘うのだ。
昏い思いに囚われ、ゾロの顔もまともに見られなくなり、避けるようになってしまった。そのことを不自然に思っているだろうに、ゾロからは何もなく、夜に触れ合うこともしなくなって暫く過ぎた。
天気が良く、珍しく芝生甲板で鉄団子を振る音が聞こえてきた。誰かが閉め損ねたキッチンの扉は隙間を作り、外の様子が僅かに流れ込んでくる。空気を震わす音とともに、振り下ろす回数を呟く低い声が4桁の2巡目を終えると、ごとりと重い音が響いた。
「ゾロ、すげぇなぁ。なんでそんなでかいの持てるんだ?」
可愛らしい声が聞こえる。チョッパーが傍にいたらしい。彼は、自分こそ人型になれば普通の人間なんか敵わないような腕力を発揮することが出るし、巨大化してしまえばもしかしたらゾロだって倒すことができるかもしれないのに、そんなことは露ほども思わないのだろう。
ゾロが何か応えているが、扉の隙間が狭くなってしまったのか、声が遠くなって聞き取れない。他愛のない会話であることは分かっているが、どうしても聴きたくなってしまった。話の内容ではなく、声を。
ゾロは不思議と、チョッパーと話すときは声音が柔らかくなるのだ。本人がそれに気付いているかどうかは分からないが、オレはその声が好きだった。
暫く触れ合うどころか、まともに会話さえしていない。声ぐらい聞きたい、と思ってしまった。
扉に近付き、そっと隙間を広げる。流れ込んでくる甲板の気配。
「あれ? ゾロ、背中に何かついてる」
よく通る可愛らしい高い声が、オレの心臓を貫いた。
気付かれた、気付かれた、どうしよう、どうしたら。
言わないでくれ、頼む、チョッパー。
ゾロにだけは……知られたくない。
「何だろう、虫刺されかな?」
痒いとか痛いとかないか? 薬つけようか?
心配そうな声が聞こえてくる中でオレはもう立っていられなくなり、扉の脇の壁に背を預けて胸を抑えた。
「ああ、これな」
ゾロの声が、とても大きく響いたような気がした。
知っていた?
「呪いをかけられたんだ」
ピシ、と心臓が軋む音が聞こえた。
あれはやっぱり、オレがゾロを殺す起点なんだ。
息が早くなり、頭が痛んでくる。
「どうやらおれに」
細い高い耳鳴りのせいで、ゾロの声が遠くなる。でも、この先を聞くくらいなら、もういっそ耳を塞いでしまおうかと思ったその時。
「死んでほしくないヤツがいるみたいでな」
固く結んでいた瞼から力が抜ける。
アイツは、何を言った?
「ゾロに死んでほしくないのは俺だって同じだぞ! 俺だけじゃねぇ、みんなそう思ってるぞ!」
「あぁ、そうだな。ちゃんと分かってるよ。これはな、死なねぇためのお守りみたいなもんだ」
「お守り? 呪いじゃなくて?」
「どっちも似たようなモンだろ」
「そうか? 俺、よくわかんねぇや」
ずるずると壁伝いに座り込むと、もう二人の会話はほとんど耳に入ってこなかった。ゾロが言った言葉だけが、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。
どれくらいそうしていたか分からないが、不意に重い靴音が近くまで来ていたことに気付いた。キィ、と軽い音で完全には閉まっていなかった扉が開く。膝を立ててそこに項垂れるオレを多分一瞥し、ゴツゴツと音を立てながらシンクへ向かう。
水音、飲み下す音、きっと大きく動いている喉仏。こつん、とグラスが優しく置かれた音。割れ物は丁寧に扱えと、躾けた成果が現れたか。
再び重い靴音を鳴らして、そのまま扉から出て行ってしまえばよかったのに。ヤツはオレの前で歩みを止めた。しゃがみ込む気配がする。オレは顔を上げられない。
少しの間膠着状態が続き、小さな吐息が頭上に落ちる。次の瞬間背後の壁に衝撃が走り、ゾロの両腕に囲われたのだと分かった。覆い被さる気配は、髪に隠れた耳を探っている。微かな鼻息を感じて起こる身震いは、もう条件反射だ。
「夜、ヤるからな」
低い声にオレが弱いことを知って、わざとそういう声を出してくることがある。今がそうだ。蹴り飛ばしてやりたかったが、それ以上に顔を見られたくない方が勝ってしまい、何もできずにいる。
身を起こしたゾロが、壁から離した指先でオレの首筋に触れ、すぐに引いた。ふ、と鼻から息を吐くように小さく笑って、何事もなかったように甲板へ戻っていった。
普段体温の高いヤツの指先が、ひどく冷たく感じた。きっと、オレの体温の方が高かっただろうから。自分でも分かるくらいに、真っ赤になっているのだろう。だからアイツは笑ったし、そんなオレの様子だけで返事も聞かずに行ってしまった。
結局夜は宣言通り有無を言わさず展望室へ連れ込まれ、声も出ないほど泣かされ、意識を飛ばされた。無茶をされたわけではなく、ただ、気持ちが昂ぶっていたのは事実だ。オレも、ゾロも。
オレがコイツを避けたことも、そのことについてゾロが何を思っていたのかも、互いに聞こうとも話そうともしなかった。
こうして何事もなかったように、オレは朝目を覚ましてゾロの腕から抜け出し、朝食の準備のために起き上がる。そうすると、寝返りを打って向けられる背中。近付き上から覗き込めば、口角が上がってにやにやと厭らしい顔で、狸寝入りにもなっていない。
このやろうと舌を打ち、オレは背中のいつもの場所に思いっきり吸い付いてやった。色気も何もない派手な音を立てて唇を離し、ムカつく緑の頭を平手で打って展望室を降りる。
「クッソ……ちくしょう……」
どうにもこうにも悔しさが募り、気を落ち着けるために煙草に火を入れようとライターを灯すと、上空から気配が降ってくる。見上げると、開け放たれた展望室の窓縁に手をついて、ゾロがこちらを見下ろしていた。まだ外は薄暗いが、にやにやと先程と同じ顔だと分かる。
「クッソ!」
ムカつくムカつくムカつく!
腹立ち紛れにキッチンの扉を思い切り閉めてやれば、その向こうから聞こえてくる大きな笑い声。
分かっている。あれはオレを笑っているのではない。ゾロ自身が心底楽しくて、嬉しい時の笑い方だ。
「そんなにアレが嬉しかったかよ……」
とっくにばれていることだと分かっていても。
ただの戯れに意味を見出してくれたのなら、それだけでオレは救われる。
だったら、アイツの望む呪いもかけてやろう。
それは二人だけの秘め事。
そしてもう一つ、オレの想いを込めてやろう。
これはゾロも知ることのない、オレだけの、密やかな、秘め事。
end
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