記事のアーカイブ

2015年04月09日 14:53
 船は慌ただしさのど真ん中にあった。いつもニコニコしている防寒帽とキャスケットが、見たこともない険しい顔で周囲に指示を飛ばしている。  ここは外界とを繋ぐ鉄扉前の廊下。向こうには青空が広がり、軍艦が何隻か見える。さらにその向こうには幾筋もの黒い煙。  戦闘があったのか。  ヒューマンショップ前で見かけた大男が、甲板で空から落ちてきた何かを受け止める。そのうちの小さい方を白くまが受け取った。とても不安そうな顔で船内に駆け込んでくる。白い毛並にべっとりと血が付いていた。 「ルフィ!」  思わず叫んだ声は誰にも聞こえていない。  大男が抱えた巨体にも見覚えがある。ジンベエだ。  二人は奥の部屋に
2015年04月09日 13:49
船縁の柵に立って向かい風を受ける。 緩やかな風が急に方向を変え、背を軽く押されたように上体を傾かせた。 このまま落ちたとて今日の海は優しく受け止めてくれるだろう。 目を閉じたのがいけなかったらしい。片手を強く引かれ硬い胸板に抱きとめられ、見上げると怒った顔。 ばーか。どこにも行かねぇよ。           「ばーか」お前なんか嫌いだ 「ばーか」顔も見たくねぇ 「ばーか」寄るな 「ばーか」触るな 何度言っても肝心なところは声に出ない。それどころか掴んだ服の裾を離せないのだから、我ながら矛盾している。 そんなオレのことを一番よく分かっているのが、
2015年04月09日 13:48
「よしよし、いい感じに育ってんな」 ゾロの腕を鷲掴みぐっぐっと力を込める。筋肉の硬さ、付き具合。そういったものを確かめる。 鍛錬中は特に後ろから眺めていることが多い。 サンジの食事が助力した筋肉が、ゾロの綺麗な背中を守っていると思うと堪らない。 「大きくなれよ」   オレの想いを食って。
2015年04月09日 13:46
指先が手の甲の骨をなぞって、離れる。 吐息がうなじを微かに濡らす。 唇が掠めるように触れて弧を描く。 全部反則だ。ずるい。 そんなにオレに欲しいって言わせたいかよ。 その悪いカオ。それだってオレが弱いこと、知ってるくせに。             少し触れると、びくりと震える。 いたずらに息を吹きかけると、桃色に染まる。 キスを仕掛けて、やめる。 その顔だ。物欲しそうに潤む青に、肚の中がざわめいて熱くなる。お前の存在そのものが反則だ。 欲しいと強請るその口許が蠱惑的で、おれを煽り続ける。 冷めない熱の責任、取ってもらうからな。
2015年04月09日 13:44
市営団地の隣同士に住む幼馴染。 アパートの4階から見えるのは鮮やかな緑の山々。 眼下には山と同じ色の頭をして両手を広げて待つ…アホ面。 今日の挑戦は生卵キャッチ。 昨日の水風船でアイツはずぶ濡れになったのに、懲りない奴。 オレは白い殻に細い油性ペンで小さく一言を書く。うまく受け止めろよ。           塞がりかけた薄い皮膚にやんわりと歯を立てる。ぷつりと裂けるのが分かって、じわりと鉄の味が滲んでいく。何度も何度も同じ場所を食んで甘い痛みを残す。唇を離すと、ぺろりとそこを這う舌が煽情的だ。 「てめぇのせいで治らねぇ」 眇めた隻眼は、しかし責
2015年04月09日 13:43
ドキドキも、ワクワクも、オロオロも、ズキズキも、全部お前がいてこそ。 お前の一挙手一投足に一喜一憂するオレを、お前はどんな目で見てる? それを思うとゾクゾクするんだ。 なぁ、もっとオレをお前でいっぱいにして。 もっともっと、お前で満足させてくれよ。           自転車を漕ぐその背中に、ぴったりと張り付く薄いシャツから伝わる熱。 慣れた道はこの先どう向かうのか手に取るように解り、体重移動も難なくこなす。 それが物語るのは安心感。 体全てを任せてくるその意味を、都合のいいように捉えてもいいのだろうか。 いい加減、こんなもんじゃ満足できねぇぞ
2015年04月09日 13:41
一つ歳を重ねるその瞬間。今年も隣にいる温もりに感謝する。 ありがとう。一年後も、十年後も、その先も。 お前がここいたらいいと、心の底から願う瞬間なんだ。           ここにいたら ちょっとだけつまみ食いさせてやる ここにいたら 後でとっておきの酒を出してやる ここにいたら 少しだけいいことがあるから だから ここにいろよ           ここにいたら うまいもんが食える ここにいたら 一緒に酒が飲める ここにいたら なんとなく嬉しそうなのは気のせいか? おれだって ここにいるのはキラ
2015年04月09日 13:40
身動きが取れなくなる。 膝から下がムズムズして、胸の真ん中がギュっとなって、背筋がざわざわして、耳の奥で心臓が煩くなる。 だって、こんなの反則だ。 いつも仏頂面のお前が、オレに向かって笑うから。           「珍しいな、お前がそんな風に笑うなんて」 「そんな風って、どんなだよ」 「ん?なんか、嬉しそう」 おれがそんな風に笑ってるとしたらそれは、お前がそうやって笑ってるからだ。           荒れた下唇に歯を立てられて、ようやく塞がりかけた傷がじくじくと熱を持ち始める。 強く遠慮のな
2015年04月09日 13:39
熱を出してバレンタインに何も用意できなかった。 まぁいいか、落ち着いたらで…と思っていたらチョコが降ってきた。 食ってみたいと、ぽろっと言った有名店のもの。 そうか並んでくれたんだ。 「たまにはおれからでもいいだろ。触りてぇから早く治せ」 不器用な愛情表現にちょっと泣いた。           アイシテルなんて言ったことも言われたこともない。 イッパイアイシテと強請るから存分にアイシテやる。 皆にアイを振りまくあいつに、唯一望むアイを与えられる自負が心地いい。 狡いあいつはやっぱりアイシテルとは言わないが、おれが口にしたらもっとあいつを独占でき
2015年04月09日 13:38
上から手を重ね、爪の生え際をなぞる。 昨日揃えてやった切り口の滑らかさに満足する。 関節を往復してから指の間に潜り込む。 水掻きをやわやわと揉んで、骨と骨の間を指の腹で擦る。 したくなるからそんな触り方すんな、てすごく我慢したような顔でいつも言うけど。   今寝こけているお前に拒否権は無ェよ。
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